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NY! vol.2 篠原編:事務局長のギャラリーそぞろ歩き 更新日:2008.06.26

最新のツンツンとがった作品を時間の許す限り見てまわりたいと思い、アートスポットを巡ってきました。
ギャラリスト篠原が感じたニューヨークアート雑感。(文・写真 / 篠原俊之)



国際写真センター(ICP)@Midtown

    到着後、荷物を宿に預けてまっすぐに向かったのが、国際写真センター(ICP)のオープニングパーティ。ここは、写真学校や貸し暗室、写真集ショップなどが併設されている大規模な写真専門の施設で、吉永塾長が今回参加するグループ展が行われている所である。マンハッタンのミッドタウンにあるのだが、東京で言うと、プレイスMをもっと大きくして、銀座の数寄屋橋交差点の角に立っていたりするようなもの、と思っていただきたい。

   日本の美術館などで行われるオープニングは、展示会場外のスペースで行われることが多いが、ここでは、会場内でビールやワインなどの飲み物が供される。そのため、作品を前にして、作家に直接感想を伝えたりしやすいのではないだろうか。日本だと食事も出てきて、作品を見るというよりもバイキングみたいな感じになりがちなのだが。

国際写真センター(ICP)

国際写真センター(ICP)の概観

プレイスM
写真家の大野伸彦、瀬戸正人、中居裕恭、 森山大道らによって運営されている写真の実験の場




ニューヨーク近代美術館(MOMA)@Midtown

   せっかくニューヨークに来たのだから、近代美術館(MOMA)に行かなければと、雨の中ミッドタウンへと向かう。MOMAでは、毎週金曜日の午後4時以降は入場料は無料になるのだ。今日は金曜日なので、もちろん今日行くことにした。他の美術館でも、無料の時間帯を作ったり、入場料を任意の寄付制にしている所が多い。日本でもこのような制度をもっと柔軟に取り入れれば、現代美術や写真展などの入場者が増えるのではないかと思う。かつて運営していた東京写真文化館でも水曜日は入場料半額にしていたが、やはり入場者が多かった。ちなみにこれは、ニューヨークをモデルにしたのではなく、マクドナルドが当時やっていた「平日ハンバーガー半額」キャンペーンをヒントにしたのだったが。

   果たして、20ドルの入場料が無料になる金曜日の夕方、雨の日にもかかわらず、入場の順番待ちの列が200メートルもできていた。塗れた傘をクロークに預けるのにさらに20分ほど並びそうな気配だったので、ビニール傘をあきらめてそのまま入場した。

   ニューヨーク近代美術館といえば、世界で最初に写真を美術作品と認定し、コレクションの収集を始めた所である。東京都写真美術館の開館の60年以上も前のことだ。当時のスターといえば、ポール・ストランドやエドワード・スタイケン。ぜひそんなお宝を拝見したいと思っていたのだが、事もあろうか、写真の展示室は、展示品入れ替えのためお休みだったのだ。ガラス越しのぞいてみると、スタイケンの展示設営が行われていた。さらにその奥の部屋ではベッヒャー夫妻の作品が田の字に組まれて設営されている様子が見られる。ここまで来て、お宝を見ることが出来なかったなんて、まるで秘仏を拝みに京都まで来たのに、拝めなかったような気分になった。しかし、ありがたいものというのはそう簡単には拝めないものだから。もう一回来なはれ!ということなのだろう。

   気を取り直して、マーク・ロスコや、ジャクソン・ポロックなどの大きな抽象画が展示された部屋に入る。なぜだかとてもリラックスできる部屋だった。何が言いたいのか、全然わからないのだけど、なぜかほっとした気分にさせられるのはどうしてなのだろう。

   

MOMA

MOMAでの展示風景

※東京写真文化館
篠原がディレクターを担当していた赤坂見附の写真ギャラリー。エドワード・ウェストンやアンセル・アダムスのオリジナルプリントのコレクションを見ることが出来た。2004年閉館。

※ポール・ストランド Paul STRAND
現代アメリカ写真界の巨匠。

※エドワード・スタイケン
Edward STEICHEN

世界各国の写真で構成された写真展「ザ・ファミリー・オブ・マン」展が有名。

※ベルンハルト&ヒラ・ベッヒャー
Bernd and Hilla BECHER

「給水塔」などタイポロジー的な写真が特徴

※マーク・ロスコ Mark Rothko
ロシア出身の抽象主義表現の作家。

※ジャクソン・ポロック Jackson Pollock
アクション・ペインティング及び抽象主義表現の代表画家。




ギャラリー巡り@Lower East Side

   3日目。この日は晴れ。ロウアー・イースト・サイド方面のギャラリーを見学する。ここは吉永塾長の個展会場があるエリアである。ギャラリーといえば、チェルシー周辺と思っていたが、最近では、家賃の高騰に嫌気が差した経営者たちが、チェルシー外の地区へと移動し始めているのだそうだ。

   地下鉄F線の「エセックス・ストリート(Essex Street)」で下車。住宅や小さな商店、昼から飲めるバーやクリーニング屋に混じって、おしゃれなレストランや、カフェ、小さなギャラリーが紛れ込むように点在している。今住んでいる四谷の街にどこか似ている感じがある。

  いくつかギャラリーに入ってみたが、展示しているアーティストは、若い人が多いようだ。わりと小さめの作品が多い。このエリアのシンボル的な存在である、「ニュー・ミュージアム」という立派なギャラリーにも行ってみたが、原宿の「デザイン・フェスタ・ギャラリー」を、お金をかけて区画整理すれば、こんな感じになるのではないだろうかという感じのスペースだ。作品は小粒と思ったが、伸びやかな感じが楽しかった。

※ロウアー・イースト・サイドの街並

デザイン・フェスタ・ギャラリー
あらゆるジャンルのアーティストが、多彩な表現を展開するギャラリー




ギャラリー巡り@Chelsea

   地下鉄が運休だったため、34丁目からチェルシーのある24丁目まで歩く事になった。高級マンションが立ち並ぶ一角を過ぎると、突然通り一本向こうは、自動車の修理工場や古タイヤが積まれた場所に様変わりする。古びた鉄道の高架下を抜け、倉庫街を歩いていく。果たしてこの道で合っているのだろうかと不安になった頃、グレーの街がいきなり真っ白い建物ばかりなり、あっという間に画廊街になった。しかも、ギャラリーしかないのだ。隣もお向かいもずーっと先迄ギャラリーが続いているのである。

   とりあえず片っ端から入ってみた。表通りに面したギャラリーはとにかくスペースがでかい。美術館のような雰囲気で、どこもかしこも巨大な立体作品を展示している。チェルシーといえばガゴシアンと言われている「ガゴシアン・ギャラリー」にも足を運んだ。巨大なコーヒーカップとパイプ椅子の作品で、コビトになったような錯覚を覚えるユニークな展覧会で面白かった。しかし、巨大な作品ばかりを見て回っていると、段々大きいサイズが当たり前のように思えてきて、逆に大四切位のカラープリントの写真展などに出くわすと、かえって新鮮に思えた事が印象的だった。

  チェルシーと言うと、アートの最先端というイメージがあったが、よく見るとそうでもない所もある。古典的な油絵や、現代美術のスタンダード的な物から、動物専門という物まで、とにかくアートと名のつきそうなものがすべてこの街の中にあると言った方が正しいのかもしれない。

  また、一見難解そうな巨大インスタレーションに子連れで来るお父さんや老夫婦など、東京では考えられない位の幅広い年代の人々が展覧会を楽しんでいる様子は印象的であった。

  「有名どころ」の巨大ギャラリーに挟まれるように点在する、古ぼけたビルにも所狭しと小さなギャラリーが入居している。大抵1階で開催中の展覧会情報を確認することができ、興味のありそうなものをいくつかのぞくと、自分と同年代位の若いギャラリストが1人でPCに向かいながら、小さなお店を運営している風景にたくさん出会い、妙な親近感を覚えた。心の中で「ガンバレヨー!」と声をかけつつ、彼らもいつかはたくさんのスタッフをかかえ、目抜き通りで大きなギャラリーを構える日が来るのだろう。自分も頑張らねば、という思いを抱きつつ、チェルシーの街を後にしたのである。大御所ギャラリーも面白いが、雑居ビルの片隅の小さなギャラリーでこういう場面に出会えたのも、大きな収穫だった。

※チェルシーの街並

チェルシーギャラリーマップ

チェルシーギャラリーマップ

ガゴシアン・ギャラリー(Gagosian Gallery)の 巨大なインスタレーション



謝辞 このような機会を頂けた吉永塾長に感謝申し上げるとともに、現地ではMAKO WAKASA様 
JAIKO SUZUKI様をはじめ、多くの方々にサポートしていただいたり、美術やギャラリーに関する適切な助言を頂き充実した日々を送ることができました。誌面を借りてお礼申し上げます。


 

今回のレポーター
篠原俊之(しのはらとしゆき)
Roonee 247 photography代表・フォトディレクター
1972年東京生まれ / 1994年大阪芸術大学写真学科卒業
1996年、赤坂にあった東京写真文化館を経て、
現在、写真ギャラリー「Roonee 247 photography」のオーナー
2006年よりresist事務局長。


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