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更新日:2008年6月2日
篠原:こんばんは。いよいよ写真展まで1ヶ月切ったけど準備は進んでいますか? 川本:はい。今はプリント作業に追われています。 篠原:このよっぱらいシリーズは、撮り始めてどれくらいになるの? 川本:ワークショップを始めた頃からなので、もうすぐ2年になりますね。 篠原:確か一番最初に見せてもらったのは、1期の授業の時(2006年)の8月位だったよね? 川本:はい。その年の写真新世紀に応募しようと思って撮り始めたんです。締切直前だったので、撮影期間1ヶ月で出したら、見事に落ちたんですけどね。それでその時の審査員に森山さんがいたので、講評の時に、聞いてみようと思ったんです。 篠原:その時は何て言われたの? 川本:「こんなのあったかなあ?」って言われました(笑)。その時は、写真新世紀に提出した9枚を見せたんですが、「もっと数を撮った方がいいよ」というアドバイスをもらいました。それで、次の講評の時には、撮ったものを全部見せました。 篠原:あれは衝撃的だったな。確かものすごい数のよっぱらいの写真がうわあっていう感じで並べられていて、圧倒的だったよね。 川本:全部ハガキサイズのプリントで、手持ちをすべて見せたんです。1つ残らず。
篠原:逆にワークショップに応募してきたときのブックの記憶が全くないんだけど、どんな作品だったけ? 川本:あの時は、応募締め切りの前日に募集を知ったので、その頃撮っていたスナップのブックを作って出したんです。当時、写真撮影の会社でアシスタントをしていたんですが、ちょうどもうやめようと思っていた頃でした。 篠原:そこは、広告写真の会社だよね? 川本:はい。その会社の広告写真を一生撮り続ける気持ちがないなと感じていて、ちょうど30歳手前だったので変えるなら今だと思って、resistに応募したんです。だから、resistが始まった当初は、特にテーマというものを持っていませんでした。 篠原:よっぱらいを撮ろうという何かきっかけがあったんですか? 川本:最初の授業で、吉永さんが応募したブックを見て、「君は影を撮った方がいいんじゃないか」というアドバイスをしてくれたのがきっかけですね。影って何だろうと考えたんですが、社会の影、すなわち、世間一般的によろしくない状態のものを撮ろうと。 篠原:それがよっぱらいだったんだ。 川本:あと、勤めていた会社の飲み会で、毎回路上で寝ちゃう先輩がいたんです。その人は、飲み会でいつも場を盛り上げようと頑張っちゃう人で、みんなが盛り上がる頃にはいつも酔っ払っちゃう。普段は、ものすごく、まじめで優しい人なんです。それで、新宿へ行って撮り始めた時に、あの先輩のことを思い出したんです。みんなだらしなく酒に酔い潰れてしまったように見えるけれど、実はそれぞれ社会で頑張ったりして酔っ払いになったんだって思えた。だから、その日いろいろあって力尽きた人を対象にしようと。 篠原:結構、知り合いで、歌舞伎町で撮影している川本君を見かけたという話をちらほらと聞きますよ。僕も、新宿で吉永さんのイベントがあった帰り道に、そのまま撮影に行ってしまった川本君を見たけど、ふっといつの間にかコンパクトカメラでちゃっちゃっと撮り始めてたよね。 川本:あの日はちょうど撮影に行こうと思っていたので。いつも終電頃から、始発までが撮影タイムなんです。 篠原:川本君が撮っているのを見て、ああ、そんなところに酔っ払いがいたんだって、気がついたよ。普段普通に歩いていても存在に気づかないもんだよね。 川本:いつも意識して歩いてるからですかね? 篠原:大体新宿で撮影する事が多いんですか? 川本:はい。一度渋谷と新橋に行ってみたんですけど、ちょっと違うなって思って新宿に帰ってきました。 篠原:何が違うと思ったの? 川本:渋谷は大学生のコンパとかで遊んでよっぱらう人が多くて、頑張った人じゃないなって。あと、新橋は、世代が上の人が多いのか、なんか新宿と雰囲気が違うんです。 篠原:銀座に近いからね。結構、高級な所で飲んでいる人が多いのかもしれないね。 川本:ああ、なるほど。僕が思っている“頑張っている人”とはちょっと違うのかもしれませんね。 篠原:撮影はどれくらいの頻度でやってるの? 川本:毎週新宿に通ってますね。 篠原:それを2年間やっているんだ。同じ街をずっと撮リ続けていると街の変化もわかったりするでしょう? 川本:そうですね。この建物がなくなったりとか人の流れが変わったな、とかはありますね。自動販売機の位置が変わっちゃって、前みたいにいいスポットライトがなくなっちゃったりという所もあるし。 篠原:なぜかスポットライトの当たるところで寝ちゃっている人の写真、結構あったよね。 川本:それと、酔っ払いで四季を感じるというか・・・忘年会シーズンだなあとか、写真を撮っていてすごく感じます。 篠原:今日は雨が降っているけど、雨の日も撮影に行くの? 川本:はい。傘さしていきます。こういう日は、屋内に寝ている時もありますし。 篠原:撮影していて、被写体の人に気づかれたりすることはないの? 川本:それはほとんどないんですが、周りの人に怒られたりすることはよくあります。人の恥ずかしい写真を撮っているなんて何事だ!とか肖像権について説教されたりとか。一応、よっぱらい(その人が誰なのかを伝える写真)を撮っているのではなく、「よっぱらいのいる風景」を撮っているんだと説明をするんですが、注意してくる方も大概酔っ払っているので、なかなか理解してもらえないことも多いです。 篠原:確かに、聞く方も酔っ払っちゃってるだろうからねえ。川本君のよっぱらいの写真は、すごくピュアで、暴力的でないからね。写真をみたらわかるよ。 川本:はい。僕としては、力尽きた人たちへの尊敬や称賛をこめて、「お疲れ様でした!」「(写真を撮らせて頂き)ありがとうございます」という気持ちなんです。 篠原:うんうん、それは写真から通じるよ。まさに、「にっぽん」の今を撮っているよね。 川本:そうですね。ケータイを持っていて、最後誰かにSOSを求める前か後かに力尽き果ててしまった人とか多いですね。あとは体育座りの人もなぜか多い(笑)。なんでですかね?
篠原:いずれにしても、こんなになっても大丈夫なんだから、平和な社会っていうことだよね。 川本:でも、平和なんですけど、財布や鞄を盗まれてしまったりとかもあるんですよ。一度、その現場を見て、お巡りさんに、「あの人の鞄が盗まれました」って教えたことがあります。結局お巡りさんが犯人を捕まえて、自分も目撃者だからって、パトカーに乗せられて、四谷警察署まで調書を取りに行ったんです。 篠原:へえ!盗まれた本人は、気づいてるの? 川本:いや、全然気づかなかったですね。かなり酔って寝てしまっていたので、まったく意識はないです。結局その時は、3、4時間調書にかかりました。やっぱりずっと撮り続けてきたからか、酔っ払った人に愛着があるんですよね。盗まれたりしている現場を見ると、守ってあげたいという意識が出てくるんです。頑張ったんだから、せめて安らかにねむらせてあげたいなって(笑)。 篠原:ものすごい酔っ払った翌日に財布がちゃんとポケットに入っているとホッとしたりするもんねえ(笑)。 川本:別の時に、盗みの現場を見た時があって、「今財布盗りましたよね」っておじさんに言ったんですが、その人が年配のホームレスだったんです。なんだか空しくなっちゃって、警察には言わずに、そのまま「財布を返した方がいいよ」とだけ言って返してもらったことがあります。 篠原:なんだかよっぱらいのガードマンみたいだね。 川本:ずっとよっぱらいを撮っていると、やっぱりいろいろあって、辛いことも半分位はありますね。 篠原:続けていることで見えてくることがあるよね。 川本:そうですね。今回は、2年間撮り続けた写真に一旦けりをつけようということで、個展をやるんですが、振り返ってみると、改めていろいろなものが見えてくる感じがします。 篠原:けりをつけることってすごく大切な事なんだよね。意外と皆撮る事ばかりに注力しがちなんだけど。 川本:そうですね。いざ、けりをつけようと思って、作業を始めると整理することの意味がよくわかります。自分の写真の傾向や、どういう写真を撮っていたのかなど改めて自分の写真に向き合え、とても良い機会だと思いました。 篠原:展示する写真を選ぶのも大変そうだよね。 川本:はい。最初は、量がありすぎて、どこから手をつけてよいのかわからなかったんです。 篠原:展示するときは、写真をいかに削るかということに尽きるからね。一番最初に展示のプランを持ってきたときに、大量の写真を全面に貼り付けたいと言ってたから、写真で勝負したらいいんじゃないのって言ったんだよね。 川本:そうですね。けっこういろいろこだわっちゃう方なんですよ。 篠原:でもさっき言ってたみたいに、群集でみせるよりは1枚1枚を見せていく展示にした方が、川本君の酔っ払いの人に対する愛情が伝わると思うよ。 川本:そうですね。そう言われて、だいぶ写真を絞りました。 篠原:自分でプリントしてるんだよね? 川本:はい。夜の撮影なので光源がばらばらなので、プリントも結構大変なんです。 篠原:今日もこの後はネオン街に行くんですか? 川本:はい。まだまだ撮り続けるつもりです。
テキスト / キム ソジョン |
![]() resist1期 1977年東京生まれ / 高校・大学とデザインを学び、なぜか広告写真撮影会社に就職 / 2006年退社 / その後「吉永マサユキ・森山大道フォトワークショップ resist 」参加 / 現在フリーランスで活動中。 タイトル タイトル |